牧師からあなたへのメッセージ     



Short Message 8 『アルジャーノンに花束を』の要約

ダニエル・キイス著『アルジャーノンに花束を』(小尾美佐訳、早川書房、1989年)は、1966年にネビュラ賞を受賞し、ラルフ・ネルソン映画監督が映画化し、日本語のタイトルは「まごごろを君に」でした。この空想科学小説は私たちに大切なことを語っていますので、その内容を要約・紹介します。

 チャーリー・ゴードンは32歳になっても、幼児の知能しか持っていない精神薄弱という悲しいレッテルを張られていますが、人々から愛されている人物です。昼間はパン屋で働き、そこで色々ないじめやいたずらに遭うのですが、チャーリーは悲しみこそすれ決して憎むことをせず、嘲笑を受け入れて、幼児のような天真爛漫さで、心もとなさそうに笑っているのです。母親の強い願いで、夜は精薄者センターで頭の痛くなる勉強をさせられる日々が続きます。

 そんなチャーリーに夢のような話が舞い込んで来ます。大学の偉い先生がまず検査をして、それから脳を手術して、頭を良くなるようにしてくれるというのです。この申し出を受け入れたチャーリーに待っていたのは、チャーリーよりも先に手術を受けて知恵を持つようになったアルジャーノンと呼ばれる白ネズミと知恵較べを強いられる過酷なテストの連続でした。このアルジャーノンにチャーリーは不思議な親近感を持つようになります。

やがて脳外科手術を受けたチャーリーにも全く新しい世界が開かれてゆきます。知的能力に目覚めて、短期間で研究所の先生たちが驚くほどの速さで、色々の分野の知識を吸収してゆき、超知識をもった天才的人間になって、優れた論文を次々に書く優秀な学者になるのです。知能は進んでも、情緒的発達は幼児的段階にとどまっています。そのギャップに悩み、戸惑い、急激に変わってしまったチャーリーに周りの人も驚き、それまでの人間関係は崩れてゆきます。

 知的指数の低いチャーリーを笑い、馬鹿にしていたパン屋で働いていた人たちの優越感はいっぺんに吹き飛んで、目覚ましい知的成長を遂げたチャーリーの前で、自分たちの無知、無能力を逆にさらけ出されることにより、彼らはチャーリーを憎むようになり、永い間の仕事仲間はチャーリーを職場から追い出してしまうのです。その結果、チャーリーは自分の家から放り出されたような淋しさを味わうのです。

 ところが脳外科手術を受けた白ネズミのアルジャーノンに異常が生じてきました。運動能力と知的能力に後退現象が目立ち出したのです。それはやがてチャーリーにも生じる可能性を示唆しているのです。そのような不安の中でチャーリーは語ります。「ぼくが精薄だったときは、友達が大勢いた。しかし、今は一人もいない。」「知能だけでは何の意味もないことをぼくは学んだ。大学や高等研究機関では知能や教育や知識が偉大な偶像となっている。でも、あなたがたが見逃しているものをぼくは知ったのです。人間は愛情の裏打ちのない知能や教育は価値がないということです。すなわち、愛情を与え、かつ受け入れる能力を欠いた知能は、精神的道徳的破壊をもたらし、神経症や精神病を引き出すということです。」

 アルジャーノンとチャーリーに実験を続けたニーマー教授に宛てた手紙にチャーリーは書きます。「あなたとストラウス博士によって開発された手術・注射併用療法は、次のように結論付けることができます。“人為的に誘発された知能は、その増大量に比例する速度で低下する”ということです。」
 そして、チャーリーはどんどんと知能退行が進んで、もとの白痴と呼ばれる人間になってしまうところで、この空想科学小説は終わるのです。

あなたをこの空想科学小説の要約をお読みになって、どのようなことを学び、考えましたか?















 

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