牧師からあなたへのメッセージ     



Short Message 4 コルベ神父の犠牲の死

遠藤周作さんが『女の一生、二部サチ子の場合』の中で描いているドイツのナチスによって、ユダヤ人虐殺と強制重労働の目的で作られたアウシュヴィッツ収容所で実際に起きたエピソードを紹介しましょう。
第二次世界大戦下、ドイツのヒットラ−政権によってユダヤ人の組織的大量殺人計画が、ポーランドのアウシュヴィッツ、ドイツのザクセンハイゼン、ダッハウ、ベルゼン、ベルリン近くの二箇所とワイマール近くの一箇所、オーストリア近くのマウトハイゼンなどのユダヤ人強制収容所で実行されました。ユダヤ人約800万人が殺されました。その中には罪の無い子供達100万人が含まれていたのです。
鉄条網が張り巡らされたポーランドのアウシュヴィッツ強制収容所の中での出来事です。一人の囚人が脱走した結果、見せしめに10人が処刑されることになりました。選ばれた10人が飢餓室に連れてゆかれようとした時、一人の男が泣きじゃくり、「女房と子供に会いたい」とうめくように叫んだのです。その時、難を逃れたグループの中から一人の囚人がのろのろと前に歩いてきて、「私をあの囚人の身代りにならせて頂けませんか」と語ったのです。親衛隊将校と部下の顔に狼狽と驚愕の色が走りました。その人の名はマキシミリアン・コルベ、囚人番号16670でした。
日本の長崎に宣教に来られたコルベ神父その人でした。餓死室に入れられて12日たっても死亡しなかったコルベ神父に石炭酸が注射されて死亡したことが伝えられました。夕暮れになり、作業が終了し、囚人たちは整列しました。彼らの前に夕日がバラ色に西の空を染めながら沈んでゆきました。遠藤周作さんは次のように書いています。「あゝなんてこの世界は美しいのだろう。昨日まではこの世界は愛もなく悦びもなかった。たゞ恐怖と悲惨と拷問と死しかない世界だった。それが今日、この世界はなんて美しいのだろう。彼らはその世界を変えてくれたものが分っていた。愛のない世界に愛を作った者の存在を・・・」。註@
私は周作さんの作品の中に登場する人の身代りになって餓死室に赴くコルベ神父の中にイエス様・キリストの姿を見るのです。イエス様は昨日も今日も明日も変ることなく人に代わって十字架の苦しみをわが身に引き受けようとなさって世界中の至るところに生きておられるのです。私たちと一緒に重荷を負っていて下さり、ある時は私たちを背負ってつらく悲しい人生の旅路を歩んで下さるのです。キリストの復活は罪と死への勝利を意味します。
私たちが決して逃れられない患難と苦難と死に直面する時、その場所はイエス様がインマヌエル・ゴッドとして私たちを慰め、力を与え、希望をもたらす場所でもあるのです。教会はこの福音を語り、これからも語り続けられる宣教の場所なのです。
註@ 遠藤周作著『女の一生、二部サチ子の場合』(新潮文庫)、264頁。  













 

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